「異端の鳥」(原題The Painted Bird)☆チェコ版おしん

凄い映画を観てしまった・・・・
そして約3時間なんてあっという間だった。本当に3時間もあった?というくらい。
ただ物語は永遠に続くかと思われる差別と虐待と孤独の日々の連続で3時間続く緊張感がハンパない。
ただ辛いだけの生活を追い続けるように見えて、どこか寓話的で希望すら感じるのは全て主人公の少年が能動的で前向きだからこそなのかもしれない。
「異端の鳥」 公式サイト
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東欧のどこか。
ホロコーストを逃れるために伯母の家にたった一人疎開した少年は、病死した伯母とともに家を焼失してしまい、放浪の旅に出る。
行く先々で異端とみなされ酷い仕打ちをうけつつ、点々としながらその場その場で居場所を見つけようと積極的に行動していく。
自らの出自を明かさぬことで、かろうじて生き延びてきた少年はついに連合軍の兵士に拾われ孤児院へと送られるのだが・・・

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鳥飼いのおじいさんが恋人(実はアバズレ女)に失恋した腹いせに、彼女に貰ったムクドリに白いペイントをして群れに放つと、他のムクドリたちは敵が来たと思って集団でそのムクドリを攻撃する。
これが原題のThe Painted Birdである。
仲間と異なる存在を攻撃するのは動物の本能だから仕方ないという事なのか?はたまた人間は動物並みの行動をとる浅はかな生き物だということか?
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ごみつさんが原作を読んで貧血を起こしたと聞いていたし、『発禁の書 奇跡の映画化』という触れ込みや、ヴェネチア国際映画祭で退場者続出ということでかなりの覚悟をしていた私。
ドラマの手術のシーンで貧血になるパパンが、日経の映画評で高得点で紹介されていたこの映画に行きたいと言い出したので内心大丈夫?と心配していたけど、見終わったパパンの感想は「冒険映画みたいでわくわくした♬」とのこと。
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噂に聞く「残酷」だとか「グロイ」と言うシーンは実はほんの一部。
しかも白黒であることと、地名や国名や言語を特定せず(使われている言葉は人口言語スラヴィック・エスペラント語)、第二次大戦時にこんな掘立小屋に住んでる?とか馬で村を襲う軍隊?など、この映画の寓話性を高めているので、まるでグリム童話の様にも感じてしまう。
実際ナチス兵(ステラン・スカルスガルド)はユダヤ人と判っていて少年を森へ逃がす。少年は様々な村で少なからず沢山の大人に助けられもするのだ。
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じゃあなぜポーランドで発禁の書であったか?
映画では10歳くらいの少年が主人公であったけれど、原作では6歳。幼い子供に対する仕打ちとしては確かに残酷で苛烈ではあるけれど。
本当のところは原作者イエールジ・コジンスキーの子供の頃の体験を小説にした・・・ことを認めたくなかった、つまりポーランドの多くの人たちが自らの意思でナチスに加担していたこと、否ナチスと関係ないところで『異端の者』に平気で攻撃を加えていた自らの行いを認めたくなかったからなのではないか?
この事実が「残酷」なのだと私は思うのだ。
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美少女と心を通わせ、遂に居場所を見つけたと思ったが・・・
この物語の救いは、ただ幼かった少年が様々なものを見聞きし習い、生き延びる為だけに手を尽くしていたのが、次第に自我が目覚めて自らの生き方を自らで選んでいくようになる成長物語だということ。
勿論、小動物の命をあれだけ大切にしていた少年が、「目には目を歯には歯を」方式まで学んでいくことに抵抗はあるけれど。
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少年はユダヤ人であることを悟られないように、出自も名前も捨て遂にはほとんどしゃべらなくなる。
実際この映画のセリフは3時間あっても両手で上手に数えられるくらい。まるで無声映画のようなのだ。

名前を捨てた少年がラスト父の腕に収容所で入れられたナンバーのタトゥーを見付けて、名前を失ったのが自分だけでは無かった事を悟り、ようやく自分の名前を取り戻すラストは涙無くしては見られない。


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