グザビエ・ドラン監督作品を見る「マイ・マザー」「私はロランス」「胸騒ぎの恋人」「トム・アット・ザ・ファーム」

関西に就職した息子が連休に帰ってきて初めて2人きりの数日を過ごした私。
実際は友達と遊び歩いていてほとんど家に居なかったのだけれど、1度だけ家で夕飯を食べて慌ただしく大阪へ戻って行く玄関で「行ってきます。」と言ってくれた言葉に何故か涙が止まらなかった。


ふと母と息子を描いた作品を見てみようと思って、最初に選んだのが「マイ・マザー」
見てビックリ!!弱冠19歳でこの映画を撮った監督がいる!?これは気になるぅ~~ということで、彼の作品をまとめて見る事に☆

「マイ・マザー」(2013年)カナダ
main_mymother_large.jpg17歳のユベール(グザビエ・ドラン)は母と二人暮らしなのに喧嘩ばかり。つい恋人のアントナンの母と比べては、情緒不安定な母とぶつかる日々に遂に家を出ると宣言する。見かねた母は離婚した父親と相談し寄宿学校へ転校する事を提案する。
恋人と引き離され家からも追い出されたと思い益々鬱屈するユベールは、ある日寄宿舎から脱走し・・・

色々な意味でビックリな作品。
美しい音楽・巧みなカメラワーク、繊細過ぎる心の揺らぎと若者らしい荒々しさが同居した物語は、明らかに親離れに葛藤するごく普通の思春期の少年の話なのに、『照れ隠す』ことなくストーレトにそれを画面にぶつけているのが監督であり主役である本人だと言うのだから。

19歳で既に反抗期を脱したから作れたのか?脱してないからこそ出来たのか?
激しい喧嘩のシーンは、イヤホンをして一切口をきかなかったうちの息子よりよっぽど会話があるじゃん・・・と思う私だけど、「花嫁姿の母を追いかけ逃げられてしまう」彼の心象心理を表すシーンで「そんなに?」とちょっぴり嬉しくなったり。
アート制作からの彼氏とのSEXシーンがめちゃくちゃ美しい☆
とにかく美しい主役のグザビエ・ドラン監督、母を愛し過ぎてゲイになっちゃったのか?自伝的物語ということで、主人公のユベールが幼い頃、タイタニックを見てディカプリオにファンレターを書いたという設定は、のちの映画「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」に繋がって行くらしい。


「わたしはロランス」(2013年)カナダ・フランス
main_large.jpg駆け出しの小説家で教師のロランスとフレッド(スザンヌ・クレマン)は最高に気の合うカップルで、日々幸せだった。ある日突然ロランスが「女性になる!」と宣言し戸惑うフレッド。葛藤の末彼を応援する事に決めるが、気持ちと反対に心は揺れ動く。女装をし始めた事で教職を追われ、奇異な目で見られるストレスに耐え兼ねたフレッドは別れを告げ去って行く。
数年後フレッドは新しい家庭を築き、ロランスも居場所を見つけたように思えたが、送られてきたロランスの詩集を読んだフレッドは・・・

アートが爆発している!監督・脚本・衣装・編集・カメオ出演と一人でこなしたからこそ出来た芸術性の高いセンスの良さが光る。
色遣いといいカメラワークといい、心象心理を表す「カラフルな洗濯物の雨」「部屋に落ちる滝」「降りしきる雪の中の母息子」「枯葉の舞い上がる街」などとにかく見事☆これを23歳で撮影したとは!!

LGBTを主題として葛藤・苦悩・母と息子の関係も含め、彼にしか作り出せない映画で評価も非常に高い作品なのだけれど、私はどうも好きになれなかった。
どうにもできない心の叫びを本当に叫んでぶちまけ合う姿は、欧米ならでは?アジア映画だったら耐え忍ぶ話になっているような・・・
本当の自分でいたいという性同一性障害の闘いと、人の心を踏みにじっても愛を貫きたいという事を同等にして美しい様に描くことに抵抗を感じる。
そのせいでこの映画の主題となっている女性でもなく男性でもなく「わたしはロランス」なのだとう大切な部分が霞んでしまうのだ。


「胸騒ぎの恋人」(2014年)カナダ
胸騒ぎ.jpgゲイのフランシス(グザビエ・ドラン)と親友のマリーはパーティに来たギリシャ彫刻の様な青年ニコラに同時に一目惚れする。互いの腹を探り合いながら次第にニコラと親しくなっていく二人だったが、なかなか気持ちを素直に打ち明けられない。
マリーを応援する様子を見せながらも自身の気持ちに抗えないフランシスは・・・

かなりまったりした作りなので何度か睡魔に襲われる。
オードリー・ヘップバーンが憧れと言うニコラの為にヴィンテージにキメるマリーを真顔でディスる様子は、途中二人が元々親友だったことを忘れそうになるし、SEXフレンドが何人もいるのにこの失恋に揺さぶられる感覚が、日本人の私にはちょっと理解しにくい。
ただし好きだからこそ踏み込めない友達以上恋人未満の切ない想いは世界共通で胸をざわめかせる☆
ラストで次に決めたターゲットが同じ男と判って、好みのタイプが同じで今後も思いやられる~~とニヤリとさせてくれる。


「トム・アット・ザ・ファーム」(2014年)カナダ・フランス
トムアットザファーム.jpg
恋人のギヨームの葬儀の為、彼の実家のある閉鎖的な片田舎を訪ねたトム(グザビエ・ドラン)は、落胆する彼の母親から歓待を受ける。
一方、暴力的な兄フランシスは弟が同性愛者であったことを決して母親に話さないよう強く要求し、嘘の女性の話をするよう迫って来た。
母親の希望で農場の手伝いをするようになったトムは、フランシスに恋人ギヨームの影を見て、暴力に怯えながらも惹かれていくのだった。

上の3つの恋愛物が続いていたので、てっきり同じような同性愛の苦悩と家族の葛藤みたいな話?と思って見ていたので、1度見ただけでは謎が多くて咀嚼できなかった。
実は心理サスペンスということだったらしく、そう思って見ると俄然面白い!
他の作品と違って、心の内をどんどん言葉でぶつけていったり、深層心理を映像で見せる事は一切ない。説明が何もなされない中、時々挟まれる「理解不能な」行動(私にとっては)で彼らの真実を見つけ出していけたら成功☆
答えのヒントはトムが寝泊まりしている部屋のベッドの位置。これで全てを語るって凄い!!


9月にも映画「マティアス&マキシム」が公開予定という事で、これから益々楽しみなグザビエ・ドラン監督。
どの映画にも割と同じ役者を使うのと、カナダ出身なのに全てフランス語の映画という事(ケベック州は公用語がフランス語らしい)と、何故か登場人物がフランシスというのが一気に見て気が付いたこと。俳優はイケメンばかりなのに、女優はおばちゃんぽい人が多いのも特徴的。
彼の根底にどんな深層心理が隠されているのか、今後も見守っていきたい役者&監督なのだった。




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