「デトロイト」☆屈辱と差別を体感せよ

バッドエンドの映画が好きだし、事件をスッキリと解決しない映画でも平気な私がさすがにヘコタレた映画。
救いが無い。
黒人差別を扱った映画も数多い中において、少しの希望、部分的な勝利、ちょっとだけ相手をギャフンと言わせるラストすら用意されていないのだ。

しかしこれが『現実』
その現実に目を背けず真っ向から突き付けてくるキャスリン・ピグロー監督の凄さに、心から感服するしかない。


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「デトロイト」 公式サイト

<ストーリー>

1967年、デトロイト市警は日に日に暴徒化する黒人たちと衝突を繰り返していた。
いよいよ軍隊も繰り出し、夜間外出禁止令の取り締まりで週末ごとに1000人以上の逮捕者が出て、警察署内は収容しきれないほどだった。
この夜も暴動で演奏中止となり、夢にまで見た舞台に立てずに終わった歌手のラリー(アンジー・スミス)はアルジェ・モーテルで1泊し騒ぎをやり過ごすことにした。
ホテルではふざけたカール(ジェイソン・ミッチェル)がおもちゃのピストルで市警を挑発し盛り上がっていたが、一触即発だった警官と軍隊は即ホテルを襲撃。上層階に泊まっていたカールの仲間とラリーまでもが警官のクラウス(ウィル・ポールター)の尋問を受けることになった。
激しすぎる尋問に怯えるばかりの黒人たちにクラウスは…


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まるで戦争みたいな暴動が50年前に起きていたわけだけれど、まだ記憶に新しい頃にも同じような暴動、黒人に対する警官の不当な発砲が起きているという現実をしっかり私たちは知らなくてはならない

黒人の地位向上、人権はほんの少しずつ上がってきているようでいて、実はトランプ政権誕生で再び歴史が繰り返されるような不穏な空気が漂っているのも事実。
女性なのに骨太な作品ばかり撮るピグロー監督、今だからこそよくぞ作ってくれました!

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スターウォーズで主役級のジョン・ボイエガは、近所の店の夜間警備員ディスミュークス役
夜間見回りで警備中の兵士たちに、コーヒーを差し入れするだけでほとんど何も活躍しないのだけれど、実は最も大切な事を発言しているのが彼。

夜回り中の兵士に様子を聞きに行くと言ったディスミュークスに、警備員仲間が心配して「大丈夫か?」と問いかけると、「話したら判る」と一言。
そうなのだ。暴力や銃に訴えなくても、きちんと礼儀正しく話かけたらちゃんと分かり合えるハズなのだ。

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冒頭の激しい暴動、略奪、小競り合い…から一転して、メジャーデビューを夢見るラリーの青春ドラマへ場面転換して戸惑うけれどここも大切

あれほどまでに夢に見ていた歌手への道なのに、ラリーは事件後『白人警官が警備するクラブで白人がノリノリで踊るような歌』を歌う仕事を拒み、給料の安い教会の聖歌隊の仕事を生涯続ける。
PTSDと親友を失ったことで神と近い仕事に救いを求めた彼の苦悩を、この青春ドラマターンが引き立てている。

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こんな青二才顔の青年にデトロイトは牛耳られていた

この役を演じるにあたって、とても胸が悪くなったとインタビューで語るクラウス警官役のウィル・ポールター。
見ているこちらも最初から最後までしかめ面になり、半分から後は涙が止まらない。

略奪したとはいえ、市民を後ろから射殺するなど上層部からも目を付けられていたのに・・・・
ラストの裁判の結果は、デトロイト市警と法曹界の癒着が如実に現れていて、ディスミュークスでなくても吐き気を催すほどだ。

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イケメンポジションのグリーンは、なんとアベンジャーズのファルコンだった!

エスカレートしていく暴動の真っ只中、そして恐怖におののく尋問シーン、助けになればと思って警察署で証言したら自分が容疑者になっていた、そして苦々しい裁判と、観客は否応なしにその現場に居合わせることになる。
覚悟が必要。
でも今こそ最も見るべき映画であることは間違いない。



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