「桃(タオ)さんのしあわせ」

ヴェネチア国際映画祭で主演女優賞を受賞したメイドの桃(タオ)さん役のディニー・イップ。
アンディ・ラウが企画に賛同してノーギャラで主役を演じたという、本作のプロデューサーのエッセイのようなこの映画は、実話が基になっているだけにドキュメンタリーのようでもある。
それは同時に、私たちが間もなく経験する介護の話であり、私たちが将来直面する老後の話なのである。


ドラマティックな展開や、泣かせようとする脚色された物語はない。
それだけに真実味があり、胸に迫ってくる。



画像
「桃さんのしあわせ」公式サイト(10月13日公開)

<ストーリー>

13歳から60年の間メイドとして勤めてきた桃(タオ)さん(ディニー・イップ)。
裕福な雇い主の一家のほとんどは、外国に移住してしまっているので、今は長男のロジャー(アンディ・ラウ)の世話をする日々だ。
しかしある日、脳溢血で倒れてしまう。
ロジャーに迷惑をかけまいと、メイドの仕事を引退して老人ホームに入ると言う桃さん。
今まで当たり前のように世話してもらっていたロジャーは、ホームの資金を出し、忙しい仕事の合間を縫って、頻繁に桃さんに会いに行く。



画像
当たり前のように世話してもらっていた時は、目を合わせることもせず、ありがとうも無し。そして笑いも笑顔も特に無し。

メイドのいる生活をしたことがないので、どちらの気持ちも判らないけど、顔も見ないし声も掛けなくても、手を出せば茶碗がすっと出てくる生活をずっと続けている人って居るのね・・・・
中国の格差社会を垣間見てちょっとびっくり。

画像
元々は美人さんで、料理上手、みんなから愛されていたメイドの桃さん

何より、老人ホームに入って自己紹介した桃(タオ)さんが、「何だかメイドさんみたいな名前だね?」と言われていたのにまたビックリ。
メイドさんの家系というのがあるのかな?

老人ホームでメイドである事をひた隠しにする桃さんと、「息子さん?」と問われてとっさに「そうです」と応えるロジャーの心遣いにも、いかにメイドが卑下されているかが判る。

画像
敏腕プロデューサーのロジャーは忙しいのに、せっせと老人ホームへ面会に行く

北京と香港を行ったり来たりしながらも、桃さんのために時間を作って会いに行く。
老人ホームでは『義理の息子』ということになっているけど、チョイ主任(チン・ハイルー)には「ほら、恋人が来たわよ。」と冷やかされる。
そのときの桃さんのうれしそうな顔ったら!


画像
リハビリ中で半身が麻痺している桃さんのために、料理を取り分けてあげるロジャー

今までしてもらってきた時にはニコリともしなかった二人も、心から笑い合う。
身よりもない桃さんにとって、60年メイドを務めてきた中でも最もしあわせな瞬間といえる。

まるで母と息子のように、まるで恋人のように、冗談を言い合い笑い、そして最後の日まで心が寄り添う。
ホームには息子がちっとも会いに来ないので、娘が来てもすねてしまう老人も居る中で、桃さんは生き生きと輝いて見えた。


終末の時をしあわせに迎えるか否かは、そこに笑顔があるかないかの差なのかもしれない。
いつしか迎える最後、必ずやって来る最後をどう過ごすか。
明日にでも母に電話を入れたくなる、そんな映画だった。



"「桃(タオ)さんのしあわせ」" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント