「恋の罪」性と生

1997年に渋谷円山町のラブホテル街で実際に起きた「東電OL殺人事件」からインスパイアされたオリジナル・ストーリーを衝撃的な作風で人気の園子温監督が映像化。
公開中の「ヒミズ」が期待度高いので、今のうちに観ておかなくちゃと思って・・・・



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「恋の罪」 公式サイト


観終わった後の感想は、正直「ま、日活だから?」


彼の描く過激なエログロの世界を評価しているだけに、「女性には誰しも二面性があって、貞淑な女性でも性に貪欲な業を持っている」かのような、男に都合のいいような解釈になりかねないこの作品に、ハッキリ言ってガッカリしたのだ。



ところが「東電OL殺人事件」を調べて、これは実はすごい作品なんだ!と、違う一面が見えてきて・・・・


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事件を調べる女刑事 和子(水野美紀)は幸せな家庭がありながら不倫がやめられない

海外では彼女のパートはカットされて公開されたらしい。
私もそれは必要ないかと・・・・

3人の女性の奔放な性を描くことによって、私が当初感じたように、本当の主題が見えなくなってしまうと私は思うのだ。



<ストーリー>

人気小説家(津田寛治)の貞淑な妻として献身的につくす主婦・いずみ(神楽坂恵)は、ふとしたきっかけでAVの世界へ足を踏み入れてしまう。
自らを解放し、次第にのめりこんでいくうちに、昼は大学教授・夜は売春婦をやっている謎めいた女性 美津子(冨樫真)と出会い、引き返せないところまで堕ちていく。

謎の猟奇殺人を調べている女刑事の和子は、意外な事実に隠された恐るべき真実を知るうちに・・・・



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緊張を強いられる結婚生活は、確かにストレスだけど・・・

セレブ生活と、過度な緊張を伴う夫婦生活を天秤にかけたら、セレブ生活は諦めるね(笑)
実際、心の安定を大切にして、セレブ生活に終止符を打った友達がいるけど☆


ストレスのガス抜きを『淫乱生活』に持っていくのは、どうも一般的ではないし、これではまるでポルノ映画。
女性の立場から性を描きたかったと園監督が言っているけど、多分はき違えているんじゃないかな・・・・と最初は思った私。



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亡き父も教壇に立っていた同じ大学で、大学教授を務める美津子には、裏の顔があった・・・・



ここで登場するのが「東電OL殺人事件」のモデルとなっている美津子である。
彼女はいずみに「愛の無いセックスなら金を取れ」とか、「きっちり私のところまで堕ちて来い!」と教え、異常とも思える夜の行状を圧倒的な迫力で見せ付ける。


まさかいくらなんでも美津子のしていることは、有り得ないよね~と思ったら大間違い。
現実の事件と違うのは、父娘が勤めるのが大学教授でなくて東電であったことと、勤めていたのが「魔女っこクラブ」なのが本当は「マゾっ娘宅配便」だったということと、映画の中での真犯人だけなのだ。


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居酒屋のトイレで着替えると、夜の顔に・・・


つまり
東電OL渡邊素子(39)は、育ちがよく高校から慶応出身で東電でも管理職のエリート、
尊敬する東電重役直前の管理職だった父親を高校生の時に亡くし、
長身でガリガリ、拒食症を患っており、
東電で仕事を終えると週末はSMクラブに在籍し、
その他は渋谷で売春をしていて、4万円ほどもらうときもあれば、1000円~5000円のときもあり、一日4人のノルマを自分に課していて、、
ホテルの布団に糞尿をするので出禁なると、路上や駐車場で客を取り、また道端で放尿するなど奇行もあり、
母と妹はそんな彼女の売春を知っていた。




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いずみは美津子の姿に引き込まれていき、ついには戻れないところへ堕ちていく・・・・


このことからも、美津子の「性」は決して欲情からくる性ではなく、「生」なのだということがわかる。
東電OL素子が生前「セックスはあまり好きではない」と漏らしていたように、彼女にとってのSEXは、リストカットと同じ自傷行為なのである。
それが証拠に、彼女のSEXシーンでは1度も良さそうな顔をしていない。

「自己否定」の現れである拒食症と自分を蔑み痛めつけることによってしか「生」を感じられない、そしてそれを周囲に知らしめることによってより自らを貶めようとする『汚濁癖』




下品に化粧し、下品な行動をし、男に下品に扱われることによって、自らを罰し、同時にそうすることでしか母親を罰することができなかった美津子。
母親が最も嫌がる『上品な家柄を穢す』行為で示した、母への反逆。

父と自分が精神的に『家族愛』を越えた「恋」で繋がっていたことへの罪。
それに気付いた母が、娘に対して行った復讐。



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不思議な師弟関係が生まれ・・・・

美津子があえて母親にいずみを引き合わせたのも、自分に対する自虐行為だ。
上品な言葉で最低の屈辱を与えてくる母に、最も女の業を見た気がした。



ここで全てに納得がいく。
いずみが路上で「立ちんぼ」になってから、男二人に殴られて鼻血を出しながら、穏やかに微笑むシーン。
これが観た時はものすごくひっかかっていたのだ。

なぜなら、オッパイも大きくて貞淑&官能的ないずみは、別に路上で「1000円でもいいよ~」と言って客を取らずとも、気に入った男性を誘惑すれば簡単に性欲を満たせるはずだ。

それをせずに、あくまでも下品に堕ちていったのは、彼女自身が美津子と同様、自虐的に生きることで、自らを救い出したかったからではないか?
それが証拠に、初めていずみが目撃した(事件現場ともなった)渋谷の空きアパートで売春する美津子の姿は、まるで手を広げて自分を救いの道に導いてくれるマリア様に見えたのだから・・・・・




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