昭和の武士道☆台湾首狩り族「セディック・バレ 第一部 太陽族/第二部 虹の橋」史実に忠実な胸アツ戦争映画

ねえねと『その土地に古来から住む民族(原住民)』について話していたら、台湾に現在も存在する(かつて)首を狩っていた民族の話になった。
「台湾の少数民族の映画があるよ」と言うので、一緒に1部2部合わせて4時間36分の大作をAmazonプライムで鑑賞することに。
そういえば公開当時はグロいシーンが多いような評判だったので、観るのをためらっていたのだった。実際は不必要にグロさを強調するようなことはなく、一般的にリアルに描く戦争映画のレベルだった。

「セディック・バレ 太陽族」(2011年)台湾 公式HP
セディック戦い.jpg
狩場の縄張りに潜入してきた隣の社(同じ部族の別の村)の首を見事に狩ったモーナ・ルダオは、遂に一人前の勇者となり証となる入れ墨を入れ、虹の橋を渡ることが約束された。
日清戦争に勝った日本軍は豊富な資源を求めて、山岳地帯に住む狩猟民族の部落を統治すべくやってきたがセディック族の攻防に手を焼く。なんとか制圧したあと35年の間、日本人がもたらす文化的生活に馴染みつつも、日本人警官の横暴な態度と差別的扱い・誇り高き狩場を失った生活に次第に不満を募らせていった。遂に今まで敵対していた部族に武装蜂起を持ち掛けた頭目のモーナは・・・

セディック日本軍.jpg
お馴染み日本の軍人(警官)は、良い上官、高圧的なのに情けない下っ端とステレオタイプ的に描かれているけど、事実なのだから仕方ないね。
キム兄や安藤政信らが出演しているので日本側の人は見分けやすいけど、社が違うけど服のデザインが微妙にしか違わない敵対する他の社との見分けが難しいのと、セディック族の皆さん顔も似ているので最後まで混乱してしまう。
森の中を裸足で縦横無尽に走り回るので、足とか大丈夫?と思ったら、本物の原住民の方が演じているのだそう!なるほど~
セディック運動会.jpg
日本人の愚かな行為を糾弾する、いわゆる抗日の映画かと思いきや、1930年(昭和5年)に起きた霧社事件では部族が集結して日本人をそれはもう女子供も見境なく皆殺しにするシーンを包み隠さず描いている。
確かにキム兄の首も見事にスパーン!と飛ぶのだけど、グロさを強調することはない。でもどうやって撮影したの~?普通に動いている人の首が飛ぶので正直リアルさは半端ない(汗

映画はセディック族(社が7つ)について描いているわけだけど、現在政府に認定されているのは16部族、最後に独立した民族として改めて2部族認められたのが2014年だというのだからとにかくビックリ!!
日本からそう遠くない台湾の、日本よりずっと小さな島に於いて、戦前まで首狩りの風習のあった部族が今もそんなに存在するだなんて・・・


「セディック・バレ 虹の橋」(2011年)
Warriors of the Rainbow II: Rainbow Bridge
第二部にらみ合い.jpg
運動会で集合していた日本人を皆殺しにしたモーナたちは、つかの間の祝杯の後森へ潜伏した。
日本軍は直ちに応援部隊を派遣したが、森に精通した彼らにことごとく裏をかかれ苦戦する。初めは蛮人と舐めてかかっていた日本軍だが遂に大砲と戦闘機、化学兵器までも使用して・・・

最後に投降したセディック族、特に妊婦は手厚く保護されたれ、その後平地へ強制移住させられ、農耕で生活するようになったそう。
第2部妊婦.jpg
一説では映画に登場したビラン剤は仲間をも苦しめるので使用せず催涙ガスだったとの説もあるけれど、飛行機による爆撃とガス使用、敵対する社を利用して戦わせるなど、史実の通り最終的には日本軍が勝利する。
第2部では和服の女子供まで無残に殺されたところからスタートするのにも拘らず、森の地の利を生かした戦術で応戦するセディック族を何故か応援してしまう私・・・
第2部二郎.jpg
日本の警官となった一郎と二郎は、セディック族の出身としての二つのアイデンティティの間で揺れ、部族の手引きをした罪を背負って自害する。
彼等だけでなく最終的にセディック族の戦士たちと、その妻たちの多くは投降せずに虹の橋を渡る(=勇敢な戦士だけが渡れるのが虹の橋で、三途の川に架かる橋と言うイメージ)
恩師も同級生も構わず狩ったセディックの少年戦士たちが、虹の橋で待っていると言い残す母を慕って子供らしく泣くシーンは印象的。
第2部モーナ.jpg
最初は「今も存在する首狩り族」というワードから見ることになった映画ではあるものの、映画を見進めると彼らを『近年まで野蛮な行為をしていた原住民』とする見方が間違っていたことに気付くのだ。
森で狩猟だけで生きるその生活スタイルは先日見た映画「サーミの血」のように「トナカイを放牧してテントで点々として暮らす」ことと同義であると考えられる。

そして「人間の首を狩って頭部を集める」事は、部族が生き延びるための手段であって、外部の者が縄張りに入ってきたら全て狩る=狩猟という行為なのだと判ってくる。こうして外部からの介入を遮断したからこそ、昭和の初期まで山の中で存続しえた部族という訳なのだ。

最後はあれだけ蛮人とバカにしていた日本軍の軍曹(河原さぶ)も、彼らの武士道精神を称えて映画は終わる。
どちらの立場からも公平に描かれたバランスの良さと、敵ながら最後には互いをリスペクトする「武士道精神」が胸をアツくする映画。
偏見を持たずに是非見てほしい~

余談だけど民族衣装と祭りで鳴らす楽器の音色が、アイヌのそれにそっくりだったのも大変興味深かった。

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この記事へのコメント

2021年05月15日 11:05
日本が台湾を統治したころ、支配されることと、インフラなどが整備されて近代化した部分があったことなど、相反する感情を持たれたりしたのでしょうね。
ほかの文化とかかわることの難しさは、世界共通なのだと思います。
ノルウェーまだ~む
2021年05月15日 15:15
>ボーさん
>
台湾へ旅すると日本のお陰でインフラ整備できたとしきりと感謝され、親日を強く感じます。
それもその後にやってきた中国が酷過ぎたっていうのもあると思いますが…
とはいえ、当時の日本軍の統治の仕方に問題があったのは事実ですものね。
2021年05月19日 21:11
台湾史の1ページでありながら、日本史でもある。
この時代の日本は、今と違う別の国なんだということを改めて知らされます。
ウェイ・ダーションの台湾&日本史シリーズでは、「KANO 1931海の向こうの甲子園」も素晴らしかったです。
これまた長いんですけど、全く飽きません。
ノルウェーまだ~む
2021年05月19日 23:33
>ノラネコさん
>
そちらの映画は気になっていましたがまだ見ていません。確か評判良かったという記憶があります。
あの時代の大いなる反省が今の日本を支えているのだとしたら嬉しいですね☆
正しく歴史を見つめる目が大切だと気付かせてくれる映画でした。

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