「聖なる鹿殺し」☆難解映画に挑む

公開当時かなり話題になっていたけれど、難解だと聞いて尻込みしていた作品。

うんうん、確かにこれは難解~~
なので鑑賞後様々な考察や解説を読んでからこのレビューを書いてみた。

「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」公式サイト(2018年)イギリス・アイルランド
聖なるポスター.jpg
優秀な心臓外科のスティーブン(コリン・ファレル)は美しい妻(ニコール・キッドマン)と可愛い子供二人で大きな家に住み幸せいっぱいだった。
医療ミスで死なせてしまった患者の息子マーティンを何かと世話していたが、ある日家に招くとそれ以来病院や家に度々現れマーティンはストーカーの様になっていった。
実は父の代わりに、自分の母親と良い仲になって欲しいと望むマーティンの常軌を逸した行いに危険を感じたスティーブンは彼を冷たくあしらうが、家族の一人を殺さなければ1手足がしびれる2食欲がなくなる3目から血が出る4死に至ると予言する。
予告通り突然足が動かなくなった息子のボブが入院するが、検査をしても悪いところは無い。
手を尽くすが改善しないまま、次は姉のキムが歩けなくなり食事もとらなくなっていった。スティーブンはついにマーティンを地下に閉じ込めボコボコにするのだが・・・

聖なる手術.jpg
優秀な医者であるスティーブンはかなり厳格な父で、子供たちにも厳しかった

謎めいた展開で、手術中の鼓動する心臓のアップから始まる冒頭からかなり独創的。
キューブリックの「シャイニング」を彷彿とさせる左右対称を引きの映像で見せて、背後からずっと追っていくところや、耳障りな金属音、あまり人物の表情がわかるところまでアップにしてないというのも、不安を煽るのに役立っている。
聖なる検査.png
マーティンが呪いの言葉を発してその通りになって行ってしまうより以前に、死なせてしまった患者の息子で純朴そうな16歳の少年がストーカーの様に付きまとい、父親の代わりになって欲しいと迫ってくる設定が何しろ怖い。
しかも目に入れても痛くないほど可愛がっている娘のキムはマーティンにぞっこんになっているし!!
聖なるニコール.jpg
途中、家族の誰を犠牲にするか逡巡するスティーブンが学校へ行って二人の子供の「どちらを選ぶか」校長先生に相談しにいく時に、キムがイピゲネイアについて書いた論文がA+の成績を取ったとサラッと話すけれど、まさにこれがミソ。
ギリシャ悲劇「アウリスのイピゲネイア」とは・・・
トロイア戦争で女神アルテミスの怒りを買い海が凪いでアウリスを出港できずにいたため、ギリシャ軍の大将アガメムノーンは長女イーピゲネイアを生贄にささげなくてはならなくなった。
騙されたと知った娘だったが覚悟を決めて生贄となる。その後母は嘆き娘を殺した夫を殺害。息子は父を奪った母を殺すという悲劇。


そもそも何故女神アルテミスの怒りを買ったかと言うと、狩りの腕を自慢して討った鹿が女神が大切にしていた鹿だったという「目には目を」「歯には歯を」の構図。
しかしこれでは鹿の為に家族全員死んだのだから、「倍返しだ!」ということになる?
Clipboard0177555.jpg
ここで普通なら(?)「家族の誰かを殺すくらいなら皆で死のう」と言うのかと思いきや、各々自分だけは助かろうと手を尽くすところがこれまた背筋が寒くなる。

ここからはどの考察にも書かれていなかったけれど、無事健康を取り戻したキムがダイナーを出るときにマーティンに向かってうっすらと笑みを見せたのを私は見逃さなかったyo
ギリシャ神話では「父親に騙された娘」が、今作では父親に「私が生贄になる」としおらしく宣言したのは実は見せかけで、何もかも計画的だったと言う図が見えてくる。まさに論文研究の成果と言うべきか。

ポスターに書かれた『彼は4つの悲劇を用意したー』というのは症状のステージの事ではなく
1)生贄を出さないことでスティーブ以外家族全員死ぬ
2)生贄を出して他の家族が助かる
3)世をはかなんで一家心中する
4)生贄で助かったキムが希望通りマーティンと暮らす
この4番目の悲劇が最も辛く、それを示唆して映画が終わる~~と言うのがこの笑みに隠されているのではないかと思うと、全く無音のエンディングロールの間にもう一度ぞぞっとしてしまうのだった。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2020年08月02日 16:58
まだ~むさん、こんにちは。
心理劇が好きなので、公開時に気になっていたのですが
すごく怖そう...と思って、見るのを躊躇していました。
難解な映画なのですね?

ダンケルクの彼が、見るからに気持ち悪くて...
お若いのに、この映画のせいで変なイメージがついちゃったら
かわいそう、と余計な心配をしておりました。><
すごい難役そうですね。
ノルウェーまだ~む
2020年08月03日 13:46
>セレンディピティさん
>
そうなんです~
私も見ている最中から、この子はこんな役をやってその後大丈夫かな?って思いながら見ていたんです。
若いうちに悪役(?)をやるって勇気要りますよね。
でも逆にある意味彼のキャリアアップの為にこの難役を選んだのは正解だっと思います!
イケメンだけがウリで出てきた若手より、これからの俳優人生で役の幅が相当広がったし限りない可能性を感じました☆
ごみつ
2020年08月04日 19:01
こんばんは!

あ~、これ前から見たい、見たいと思ってたんですよね!
アマゾンプライムにありますね。

記事を読ませていただいても凄く面白そうなので、近いうちに見てみます。

このところ、出社時間が微妙に早くて微妙に遅い時間になってて、なかなか映画やドラマを鑑賞出来ずにいます。( ;∀;)
ノルウェーまだ~む
2020年08月04日 21:26
>ごみつさん
>
お仕事お忙しいのですね~?お疲れさまです!
これ絶対ごみつさんお好きだと思いますよ。
ご覧になったら是非このページに感想を寄せてくださいませっ!
ラストどんよりしがちですけど…(苦笑
2020年08月06日 16:58
こんにちは。
深く鋭い考察、拝見しました!
そうそう、ラストのあのダイナーはきっと4番目の悲劇の幕開けだったのでしょうね~。
この監督、本当に鬼才だと思います。奇才かな?(笑)
ノルウェーまだ~む
2020年08月07日 00:04
>ここなつさん
>
なんとなく怖い話と思って避けていたのですが、難解ながらも深い話でしたよね~
素直に生贄になるギリシャ神話と違って、妻も娘も自分の保身に走っていや~その辺り充分怖かったですが・・・
私この監督の作品はどれも観た事なかったので、今度少しずつ見てみますっ!

この記事へのトラックバック