「ウィンド・リバー」☆凍て付くもの哀しさ

ただただ静かに立ちはだかる広大で荒涼とした大自然が、その過酷な地に追いやられたネイティブアメリカンの苦悩を静かに物語る。
そしてその結末は映画「ボーダライン」のラストと同様、事件は解決するのに、胸に深く突き刺さったくさびを抜くことはない。


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「ウィンド・リバー」 公式サイト

<ストーリー>

地元のハンターのコリー(ジェレミー・レナー)はインディアン居留地のウィンド・リバーで若い娘の遺体を発見する。
やっと到着したFBIの新人捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)は、レイプされ裸足で逃げ出したものの寒さで肺が破裂したことが死因では応援を要請できないと苦慮していた。
娘も同様に亡くしたコリーに協力を求め、ネイティブアメリカン居留区の捜査はしない州警察に代わり、部族警察長のベン(グレアム・グリーン)と3人で犯人を追い詰めるのだが・・・


「ボーダーライン」の脚本のテイラー・シェリダンが監督。
なるほど~好きだわこの人の作品。

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マイナス30度にもなる過酷な地にネイティブアメリカンは追いやられた

荒涼とした景色は晴れていれば青空と美しい白銀の世界だけれど、変わりやすい天候はすぐに吹雪へと姿を変える。
まさかそういった地ではマスクもせずに外を走っただけで肺が破裂するなんて!!

そう言えばノルウェーでもマイナス10度くらいになると息をするだけで鼻の中がパリパリと凍ったものだった。
そして冷気に慣れさせるために、ママはカフェでもベビーはムートンの毛皮に包んでバギーに載せて外に出しておいたのを思い出す。
肺を赤ちゃんの時から鍛えないと生き抜けないのだ。


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二人の悲哀とかすかな希望が、より一層もの哀しさを増す

最後のテロップには「数ある失踪者の統計にネイティブ・アメリカンの女性のデータは存在しない。実際の失踪者の人数は不明である」とある。
果たして州警察の権限が及ばない自治区であることは自由なのか?逆に自由を与えることで国の保障を与えない理由にしているのか?

地の果てとも言えるような過酷な土地に追いやられたネイティブアメリカンが住むウィンド・リバーには、FBIですら新米捜査官を派遣する程度に軽視されている事がうかがえる。
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とにかくキャスティングが素晴らしい

娘を無残な姿で失った父親を、終始渋い顔でジェレミー・レナーが好演。とにかく見事!
FBIのエリザベス・オルセンもナイスキャスティング♪美人過ぎない、やり手感薄いけどバカっぽくない彼女で大正解~~と心の中で拍手しちゃった☆
敵と対峙してトンデモナイ撃ち合いになった時も、アベンジャーズの特殊能力出せばいいじゃん!みたいなことは一切思い出さないくらいの自然演技ですっかりのめり込んでしまったwa☆

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冒頭の不穏な音楽から、エンディングのもの哀しく静かな曲まで、凍て付いた土地で生きる彼らの苦悩を見事に表現している

多くを語らないのに、次第に事件が解明されていく展開も秀逸。
しかし腕利きのハンターのコリーがつけた決着は、本来ならスッキリとするところだろうけれど、この作品はそれを許さない。

それは「その」事件の犯人を成敗したからといって、問題は何も解決されないからに違いない。
個人的に前を向いて行こうと決意する『希望』が垣間見える結末だとしても、すぐ横には寡黙で過酷な大自然と差別が相変わらず横たわっているのだ。



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この記事へのコメント

2018年08月15日 15:08
まだ~むさん、こんにちは。
私もこの作品見ました。すごくよかったですね。
ボーダーラインの時は多少エンタメ要素があったように感じましたが、この作品は骨太に真っ向から人種差別問題や地域の問題に取り組んでいて、なおのこと心にずしりと響きました。
FBIの新米捜査官、最初はだいじょうぶかな...と心配でしたが、ものすごくガッツのある子でしたね。
ジェレミー・レナ―もぴったりのキャスティングでした。
ノルウェーまだ~む
2018年08月15日 22:33
セレンさん☆
ボーダーラインってエンタメ要素あったでしたっけ?!
ちょっと忘れてしまいましたが、いずれにしてもどうにも出来ないような重い問題を我々に突き付けたまま終ったところが、作品的に似ているなと思いました。
新米捜査官のごく普通な感じが実に良かったですよね。ガッツもあるし~☆
2018年08月16日 16:25
こんにちは!
この作品、ブランチで紹介しててみたいな~って思いながら見てました。富山でも来月末公開みたいで楽しみです。
ノルウェーまだ~む
2018年08月16日 18:30
Nakajiさん☆
これ結構面白かったですよ~
これから公開になるのですね?観たら是非また感想聞かせてくださいね!
2018年08月17日 09:21
よかったです~!
先住民たちは居留地を与えられているといっても
とんでもない砂漠の中だったり、雪の中だったり。
この人たちの、生活保護費なんかはどうなっているのだろうと観ていて思いました。
あるのは絶望と暴力ばかりですものね。
ノルウェーまだ~む
2018年08月17日 21:06
zooeyさん☆
個々の力ではどうにもならない途方もないような絶望の中で生きて行きながらも、ラストで立ち直ろうとする息子を迎えに行く父親の、かすかな希望が垣間見えるところなど、その辺も秀逸だったと思います。
誰もがその劣悪な環境と戦う戦士であらんとする姿に胸を打たれました☆
ノラネコ
2018年08月17日 22:00
テイラー・シェリダンの映画を見ると、映画で描かれていることの背景を知りたくなります。
映画のスクリーンの外側に、大きな余白を感じるのですよね。
シェリダンの特質かもしれません。
この映画もモデルとなった事件が2009年にあって、映画とはかなり事実関係は違うのですが、この世界の闇を感じさせるものでした。
ノルウェーまだ~む
2018年08月18日 21:20
ノラネコさん☆
この映画が実際の事件を元に想起されたお話とは知っていましたが、モデルとなった事件が2009年にあったのですね?
ちょっと調べてみたいと思います。
こんな風に映画を見た人が、社会の問題点や闇を知ろうとし、知ることで何か行動を起こしたり考えさせたりする点でも、この監督の作品は素晴らしいと感じます☆
2018年08月27日 12:51
こんにちは。
早速ご訪問してくださりありがとうございました。ちょっと体調を崩していて(夏バテ?!)ご訪問が遅くなり申し訳ありません。
もうもう、申し分ない作品でした。哀しみと再生への予感のバランスが上手く取れていたと思いました。ネイティブ・アメリカンの居住地が実際にどんな環境に置かれているのか…根深い問題のような気がします。
ノルウェーまだ~む
2018年08月28日 21:33
ここなつさん☆
お身体大丈夫ですか?これだけ暑い日が続くと体調も崩しますよね。
お大事になさって下さい!
明らかなハッピーエンドにせず再生を感じさせるラストが実に良かったですね~
2019年10月10日 17:26
いやあ、ウインドがリバーでしたね。いかにも寒そうな名前。
ノルウェーまだ~む
2019年10月10日 22:33
>ボーさん
>
一面雪の川面を渡る風がめちゃ寒そうです。
2019年10月14日 17:02
雪原の大地と人間の厳しさという二つの大きなテーマが背景にあると思います。

犯罪に対して甘くなるという考え方と、こうした厳寒の厳しい土地柄というのは、如何にも合わないように思います。この厳し過ぎる自然が、事件のきっかけを作ったという、言い訳もしていますが、犯罪への関与というのが、自然の脅威が大きすぎるせいか、その畏怖に萎れて、我先にと脱落して行く人を尻目にする、レースのようにも見えました。

捜査する側でさえ、ひどく混乱するのですから、こうした苛酷な世界にこそ闇があるのでしょうね。

不毛な殺し合いとなってしまいましたが、殺す側が被害者を穢し屈辱を味合わせる行為こそが、最大の穢れだと思います。力の強い者が勝つとは限らないですし、犯罪による穢れというのが、友情をも失うものだという事だと思いますが、そうした切った張ったの世界というのは、ある意味で、リアルな生きる本能のぶつかり合いであるのと同時に、極めてセンセーショナルな力があるように思います。
ノルウェーまだ~む
2019年10月14日 23:39
>隆さん
>
自然だけでなくその土地に深く根差す人種差別がこの物語の根源になっているので、解決が難しいという結論が物悲しい映画でしたよね☆
自然が厳しかったら皆犯罪に走るというわけでもないので…
そうでないと北極圏みな犯罪者だらけですものね(笑)

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